ブックガイド 気楽に読んで査定力アップ!(49)


 気楽に読める一般向けの本で、アンダーライティングに役立つ最新知識をゲットしよう。そんなコンセプトでブックガイドしております、査定歴22年の自称査定職人ドクター・ホンタナ(ペンネーム)です。今回のテーマは「産科の今」。長崎大学病院長で産婦人科医の増﨑先生とサイエンス・ライター最相葉月さんの対談本「胎児のはなし」から読み解きます。

 産科って保険診療ではない部分が多いので、産科医や妊婦当事者でなければなんともよくわからない世界です。わが子が生まれた20年以上前の産科知識しかなかったので最新の産科医療を知るよい機会になりました。まず、びっくりしたのは胎児の顔写真。これがけっこうたくさんネットにアップされているんです。「3D/4D エコー」で検索してみてください、驚きです太陽の塔のような胎児の顔、顔、顔。2000年以降に出現したエコー装置らしいです。今どきの妊婦さんはこうして生まれる前に子供の顔を見てるんですね。

 こうした医療の進歩の中で知っておくべきもうひとつはNIPT(non-invasive prenatal genetic testing)です。NIPT(新型出生前診断)とは、妊婦さんの血液中に含まれる胎児のDNA断片を分析することで、胎児の染色体の変化を調べることができる出生前診断です。検査の対象となる染色体疾患は、ダウン症候群(21トリソミー)、18トリソミー、13トリソミー、これ以外の染色体異常もわかるようですが現在自主規制されているとのこと。母体末梢血だけで検査できるため高価(20万円程度)にもかかわらず結構安易に検査が行われているようです。胎児ではなく母親自体の染色体異常も検出するので胎児の確定診断のためには陽性結果がでたら羊水検査をやらなければ確診できないのですが、NIPT陽性だけで9割以上の女性が中絶を選択するらしいです。

 中絶と言えば日本の中絶数は年間17万件!多くは医学的な理由ではなく社会的な理由です。今の日本は少子高齢化で年間30万人の人口減少と言われていますが、その半分にあたる妊娠が中絶されているというのもまた事実です。

 増﨑先生の専門は胎児の疾患を胎内で診断し治療する「胎児治療」です。出生直前までの胎児は胎盤という人工心肺(?)装置につながれているようなものです。胎盤につながった状態で母体外に取り出し、胎児の心臓や肺の手術を終わらせてから胎盤から分離し出生となる・・・なるほどアクロバティックですが理にかなっています。ただ、生まれる前の治療なので自費なんですね。また、そんな苦労をして救命しても親からももちろん胎児からも喜ばれないという話もあり、なんとなく生まれる前は命ではないというような生命観の裏返しなのか、と考えさせられます。増﨑先生はこの「胎児から出生」という境界での医療にエネルギッシュに取り組んでこられたんだな、胎児が好きなんだな・・と感じました。

 最新の産科ってこうなっているのか・・・。そろそろ孫ができてもおかしくない歳になってあらためて産科の進歩に驚きです。
(査定職人 ホンタナ Dr. Fontana 2019年7月)


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